荏原製作所(以下:荏原)は、2022年から開発を進めているロケットエンジン用電動ターボポンプにおいて、このたびロケットの燃料である液体メタン(LCH4)を多く含有している液化天然ガス(LNG)と酸化剤である液体酸素(LOX)(以下:実液)での運転試験が完了し、製品が安定して作動していることを確認しました。
実液を使用したロケットエンジン用電動ターボポンプの運転試験完了
~ 既存のシステム課題を解決し、宇宙輸送を身近なものに ~
1.背景とねらい
荏原は、「人と宇宙のつながりを当たり前に」をミッションに、宇宙事業への取り組みを2021年に立ち上げました。以来、低コストで自由度の高い輸送手段の確立に貢献するため、ロケットエンジンに燃料を供給する電動ターボポンプ(本開発品)の開発を進めています。
本開発品の搭載を想定している2液型液体燃料ロケットは、燃料と酸化剤をそれぞれのタンクからターボポンプで燃焼室に送り込み、燃焼により生じる高温高圧ガスを噴射することで高い推進力を得る仕組みで、世界中で使用されています。
しかし、現在、ロケットに搭載されているタービン駆動のポンプ※1は、高コストかつ構造が複雑で、運用が難しいという課題があります。
それに対し、荏原の開発する電動ターボポンプ※2は、搭載したバッテリーの電力でモータを駆動させる新しい方式です。これにより、従来のポンプに比べてエンジンシステムが簡素化され、容易な出力制御を実現します。
なお、本開発品は、2024年9月に実液と性質が近い液体窒素による性能試験が完了しています。
2.試験の概要
今回の試験では、実液を使用し運転試験を行いました。本試験を通じて、ポンプの異常振動や実液の漏洩などもなく、目標の回転速度や計画していたデータが測定でき、製品が安定して作動していることを確認できました。
| 試験名称 | 電動ターボポンプ実液試験 |
| 試験目的 | 実液における定格回転数時の性能および健全性確認 |
| 試験期間 | 2025年6月17日~2025年8月1日 |
| 場所 | 荏原 富津事業所 |
| 試験内容 | 実液使用時の電動ターボポンプの性能が設計通りになっているか、流量、圧力、回転速度などを計測 |
3.今後の展開
今後は、2028年の実用化を目標に、さらなる性能向上を目指した詳細設計と試験を進めます。また、本開発品をロケットエンジンに搭載することで、エンジンシステムの簡素化、信頼性向上、精密な出力制御を実現し、宇宙輸送を身近なものにすることが期待できます。
ー 荏原グループについて ー
荏原グループは、長期ビジョンと中期経営計画に基づいてESG重要課題に取り組むことで、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、企業価値のさらなる向上を図っていきます。
ご参考
・荏原の航空宇宙分野の事業化へ一歩前進! ロケットエンジン用電動ターボポンプの極低温流体試験に成功(2024年11月8日付 当社ニュースリリース)
・荏原の航空宇宙事業についてはこちら
※1 高温の高圧ガスで回転させるタービンにより、ポンプの羽根車を回転させるポンプ
※2 羽根車を回転させる動力源として電動機を使用しているポンプ