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Japan

CFOメッセージ

CFO

効率性と収益性を高め、次の10年の原動力に。
E-Vision2035に向けて成長を加速させます。

執行役 CFO 渕田 徹也

E-Plan2025 3年間の成果

効率性・収益性と成長性、その両立を実現

E-Plan2025の3年間を振り返ると、最も大きな成果は、効率性(資本効率)と収益性(営業利益率)を確実に向上させながら、同時に成長性(売上規模)の拡大を達成できた点にあります。私たちは、効率性・収益性を高めることが最優先で、売上成長は結果としてついてくるものと考え、活動してまいりました。その結果として、質の追求が、質・量双方の向上につながり、増収増益を実現することができました。これは、各部門が顧客起点の価値創造を念頭に、地道な取り組みを積み重ねてきた成果であり、価値ある3年間であったと捉えています。

業績推移

E-Plan2025 3年間の課題

グローバル経営基盤の確立と投資マネジメントの高度化が、次の飛躍の条件

成果を上げた一方で、今後の成長を見据えた上での課題があります。

最大のテーマは、グローバル経営基盤の強化です。特にERPの導入・定着は依然として最重要課題であり、次の成長施策の効果を最大化するためにも、確実にやり切らなければなりません。ERP導入における論点は、「標準化の範囲をどう定めるか」にあります。当社グループは、事業ごとに扱う製品やプロジェクトの性質、リードタイム、商習慣が大きく異なる上、顧客ごとに異なるニーズに寄り添い、カスタマイズしたソリューションを提供できる力を強みとしています。その一方で、グローバルで標準化を進める以上、どこを共通化し、どこに独自性を残すのか、明確な線引きが不可欠です。捨てるべきものは捨て、残すべき強みは残す。現在、私たちはその判断を一つひとつ積み重ねながら、将来の競争力を支える経営基盤の姿を形づくっている最中です。

もう一つの課題が、投資案件の深掘り・優先順位付け・投資評価のサイクル確立です。E-Plan2025の期間中、所定の投資は着実に進めました。次の3年間で取り組むべきテーマは貪欲な投資機会の発掘、投資案件プールの拡充、経済価値の観点からの厳密な優先順位付け、確実な実施と実施後の評価、そうした投資管理のサイクルを確立することだと認識しています。

E-Vision2035の策定

社会価値を起点に、経済価値を引き上げる

2026年2月に発表した新たな長期ビジョンE-Vision2035では、社会・環境価値の創出を起点として経済価値を生み出すという考え方を明確に打ち出しています。幸運なことに、当社は本業そのものが社会課題の解決に直結しています。この恵まれた立ち位置を最大限に生かし、本業を通じて社会・環境に価値があるものに取り組み、その結果として得られる経済リターンを通じて、収益性と効率性を高水準に引き上げていく——それがE-Vision2035の財務面における基本的な考え方です。そのため、事業を通じた社会・環境への貢献を定量的に可視化し、それに伴う自社への財務インパクトを算定する取り組みも進めています。

E-Plan2028 キャッシュアロケーションと
投資マネジメント

強化されたキャッシュ創出力を、成長投資へ集中配分する

E-Plan2025のキャッシュアロケーションは、ほぼ計画通りであったと捉えています。キャッシュインにおいては、各事業の収益力向上により、営業キャッシュフローを創出する基盤が構造的に強化されました。3年間累計で約2,700億円、年平均で約900億円規模のキャッシュを安定的に創出できる体制が整っています。さらに、キャッシュアウトも計画通りに実行し、創出したキャッシュを成長投資と基盤投資にしっかりと振り向けました。

E-Plan2028は、10年後を見据え、キャッシュ創出力を一段と強化することで営業キャッシュフローを着実に積み上げながら、それを積極的に成長投資と基盤投資、とりわけ成長投資に重点的に配分していくことで、更なる成長を実現する段階と位置付けています。負債活用に関しては、ROEスプレッドとROIC-WACCスプレッドを共に考慮し、最適と考えられる水準を設定しました。

キャッシュインの面では、過去の投資からのリターンを確実に刈り取り、営業キャッシュフローを3年間累計で約4,000億円に拡大します。キャッシュ創出力の高い精密・電子事業の利益構成が増加することで、全社の営業キャッシュフローは増加していく見通しです。

キャッシュアウトの面では、3つのグローバルビジネスセグメントを中心に成長投資として、生産能力の増強、研究開発、新規事業、M&Aなどに3年間累計で2,600億円を投じます。並行して、基盤投資として、維持更新設備や人的資本、ERPなどのIT、ビジネスインフラ、ESG関連に600億円の投資を計画します。

また、成長投資の目的の一つに事業領域の拡大があります。M&Aはその手段の一つという位置付けで、M&Aありきではなく、より付加価値の高い領域に踏み込む際にベストな選択肢であれば活用する方針です。投資判断においては、事業別・地域別ハードルレートに照らした妥当性の検証に加え、シナジーを楽観的に見積もりすぎないよう基準を設けています。加えて、M&Aの成否を分けるのは投資後のマネジメントと認識しています。投資の検討段階からPMIまでを1つのプロセスとして捉え、事業部門とCFOラインが一体となって関与します。計画どおりに進まない場合には、きめ細かく計画を見直し、修正していく。「取得した事業などを真に自社の力にするまで見届ける」姿勢で取り組んでいきます。

なお、今回のE-Plan2028策定にあたっては、リスクプレミアムの変動や市場金利の上昇を反映し、投資案件の事業別・地域別ハードルレートを見直しました。引き続き、資本コストを上回るリターンを厳格に追求することを規律として重んじてまいります。

あわせて、資本構成の最適化の一環として、負債も活用します。D/Eレシオ範囲を0.4~0.5に保つという財務規律のもと、コントロールする方針です。その背景には、中長期的な企業価値向上の観点から、ROEスプレッドとROIC-WACCスプレッドの双方を向上させることを大切にしたいという想いがあります。ROEスプレッドのみを追求すればひたすら財務レバレッジを高める、という道もあるものの、それは負債コストの上昇を招き、結果的にROIC-WACCスプレッドの改善にはつながらないと考えています。

なお、当社のキャッシュアロケーションの図は、研究開発費は将来成長に向けて意思を持ってアロケートするものという考えのもと、キャッシュインフロー、キャッシュアウトフローの中に研究開発費を考慮した上での表記としておりますので、ご承知おきください。

キャッシュアロケーション

ROIC経営の深化

成長と規律を両立させた投資戦略

当社グループがROIC経営において真に目指すのは、単にROIC-WACCスプレッドを追求することではなく、スプレッドという規律を保ちながら、企業価値の絶対額であるEVAを最大化することにあります。

スプレッドのみを過度に追い求めれば、高収益な既存事業への過度な選別が進み、将来の成長に向けた投資を抑制する、いわゆる縮小均衡に陥るリスクが生じます。そこで今中計では、各事業のスプレッドを効率性指標としてモニタリングしつつ、各事業が創出したキャッシュを、将来のEVA拡大につながる成長領域へ規律をもって再配分するという投資のプロセスを明確にしました。

この観点から、セグメントごとの特性に応じた資源配分を徹底しています。例えば、国内中心のインフラ・環境の2事業はすでに十分なROIC-WACCスプレッドを確保していますが、成熟市場ゆえに追加投資によるEVAの増加は比較的小さい。一方で、3つのグローバルビジネスセグメントは、成長市場ゆえに追加投資によるEVA増加期待は比較的大きいと見ています。時間軸を意識しながら、市場・事業のポテンシャルと全社への利益貢献度が高い領域に優先的にキャッシュを配分していく考えです。

現場の「筋肉質化」と全体最適への挑戦

個々の事業のROIC向上にあたっては、ROIC経営を組織に浸透させる際、現場に対して過度に細かい指標管理を求めないよう意識してきました。資産の割り付けを細部にわたって精査し始めると些末な議論に陥りかねません。大きなくくりで捉え、経年変化を着実に追っていく——そうした運用が功を奏し、利益を上げることだけでなく、投下資本全体をいかにコントロールするかという意識が、組織全体に正しく浸透してきたと感じています。 

ただ、子会社単位の棚卸資産や売上債権のコントロールは進んでいるものの、事業全体としてグローバルに最適化する視点——どこに在庫をどう持つのが最適か、受注・売上予測と在庫のあり方をどう連動させるか——にはまだ到達できていません。個々の担当範囲での投下資本を減らす意識は根づいていますが、そこから更に一段引き上げ、事業全体の全体最適を実現することが、これからの課題です。

この全体最適を実現していくために、事業部門との対話のあり方にもこだわっており、 「3年後のROIC目標に向けて、今どのような手を打つか」という中長期視点の問いかけを重視しています。手近な手段で短期的に数字を改善するのではなく、事業の筋肉質化を進めることこそが重要だからです。長期的な視点を持ち、将来良好なスプレッドへと到達するために今何をすべきかを考えること、それがROIC経営の本質だと考えています。

ROIC-WACCスプレッドの最大化

資本市場との対話によるWACCの低減

WACCの低減に対しては、IR機能の役割が極めて重要です。まず、自社の姿を適正かつ透明に開示すること。そして、資本市場からいただくご意見に真摯に向き合い、たとえ即座に明確な回答ができない場合でも、時間軸や条件を含めて丁寧に対話を重ねていくこと。こうしたフィードバックを社内で咀嚼し、具体的な改善を繰り返すことで、当社に対する理解が深まり、ひいてはWACCの低減につながると確信しています。

株主価値の最大化

資本市場と事業(製品・サービス市場)の結節点に立ち、価値を届け続ける

効率性・収益性・成長性の追求を通じて、すべてのステークホルダーの満足を得た上で生み出される価値を、株主・投資家の皆様に確実にお届けすることが、私の重要な責務です。配当については、成長基調にある現状においても配当性向35%以上を維持する方針です。営業キャッシュフローをしっかりと稼ぎ、自社の成長に必要な投資を行った上で、資産売却などの収入を除く3年累計フリーキャッシュフローの100%以上を還元します。

還元の進め方にも変化を持たせます。従来は数年に一度、自己株式の取得を行ってきましたが、今後はより機動的かつ継続的に実行していく方針です。当社は利益成長を続けており、自己資本が積み上がっていく局面にあると捉えています。創出したキャッシュを成長投資に充てた上で、なお投資機会がなければ、速やかに資本市場にお返しする。3年間の時間軸で着実に還元を行います。

CFO着任以来、投資家の皆様から「なぜ異なる5つの事業を1つの企業体で保有するのか」と問われてきました。技術基盤や顧客基盤の共有などもありますが、私がCFOの立場から特に強調したいのは、「市場特性やサイクルの異なる事業が、財務・事業基盤の両面で支え合っている」点です。特に、内部資金融通の機動性の利点を実感しています。精密・電子事業はボラティリティが大きく、半導体関連市場の急激な需要増に応える先行投資を事業単独で賄えない局面がありましたが、その際は、他事業が創出する安定的なキャッシュフローを迅速に振り向けることで、同事業の成長を財務面から支えてきました。その都度外部調達をする選択肢も取り得ますが、現時点では、内部調達できることが会社全体の安定的成長に寄与していると捉えています。もちろん、各事業について当社がベストオーナーであり続けているか、絶えず検証してまいります。

こうした取り組みの結果、コングロマリット・ディスカウントは縮小傾向にあると認識しています。5つの事業が分断されたものとしてではなく、全体としての相乗効果を評価いただけるようになってきました。この価値を資本市場に伝え続けることこそ、CFOとしての私の重要な役割です。資本市場の声を社内に届け、社内の変革を資本市場に示す——その結節点に立つことに、責任とともに大きなやりがいを感じています。

TSRロジックツリー

当社では、株主価値向上のための指標としてTSR(株主総利回り)を重要視しています。経営の重要指標であるROEとともにTSRを各影響因子に分解した上で、個別施策と結びつけてその改善を推進しています。PBR水準を意識しつつ、ROEの向上と中長期的なTSRの最大化を目指していきます。

TSRロジックツリー

2026年6月

執行役 CFO
渕田 徹也