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Japan

ゲーミフィケーション技術で技能伝承、 “人を主役にした製造DX”「EBARA-D3™」を立ち上げ ~熟練技術の伝承危機の解決にゲーミフィケーション技術で挑む~


メタバース空間上で再現された荏原製作所 藤沢工場

 

荏原製作所(以下:荏原)は、製造業における技能伝承や現場の属人化といった深刻な課題に対応するため、ゲーミフィケーション技術※1を採用した新たな製造DXプロジェクト「EBARA-D3™」を立ち上げました。

EBARA-D3™は、知識、技(技術・技能)、哲学を3D空間上で再現するデジタルトリプレット(D3)※2をベースとした、荏原独自の製造DXプロジェクトです。既に藤沢工場で試験導入を開始しており、今後は他社との共同開発も視野に入れ、社会実装を加速させていきます。


1.背景
近年、日本の製造業は、熟練人材の減少や技能の断絶が深刻な課題となっています。特に製造現場では、依然として属人的な判断や“勘と経験”に依存する場面が多いため、技能の再現・共有が難しく、若手人材の早期戦力化が難しい状況にあります。

こうした背景から荏原は、ものづくりにおける技能を次世代につなぐことを目的に、日本の製造業の知識、技(技能・技術)、哲学を形式知化・可視化し、ゲーミフィケーション技術を用いることで、誰もが育ち、誇れる製造現場をDXで構築することを目指し、2023年から「EBARA-D3™」を立ち上げ、2025年から試験導入をスタートさせました。


2.EBARA-D3™概要

EBARA-D3™は、従来の設備や工程をデジタル再現するデジタルツインに加えて、作業者の判断や感覚といった定量化が難しい暗黙知もデジタル上に再現する「人が主役」のデジタルトリプレット(D3)をベースとしています。

また、ゲーミフィケーション技術を採用することで、学習を「楽しみながら続けられる体験」に変換。技能の平準化と定着を加速します。


<EBARA-D3™を構成する2つの機能>

「EBARA-D3™」は、荏原独自のナレッジデータ基盤「Beyondverse™(ビヨンドバース)」と、技能伝承・教育体系システム「DOJO™(ドウジョー)」の2つの中核プラットフォームで構成されています。この2つを密接に連携させることで、技能伝承だけでなく、より最適な人員配置を実現します。

■荏原独自のナレッジデータ基盤「Beyondverse™」

荏原独自のメタバース空間 荏原独自のメタバース空間

 

工場内に存在するモノや人をデジタル化し、メタバース空間上で再現することによってさまざまな検証やシミュレーションを実施。最新のゲームエンジンを用いることで、工場内の設備から人、さらには台車に至るまで、あらゆるものを3Dデータ化し、その動きをデジタル空間上で再現できるようにしています。


■技能伝承・教育体系システム「DOJO™」

DOJOのコンテンツの1つである作業姿勢評価アプリ DOJOのコンテンツの1つである作業姿勢評価アプリ

 

個々人のスキルに関する情報の管理とスキル向上に資する教育コンテンツを提供。スキルを定量的・客観的に評価・可視化しデータベース化することで、それぞれに適した教育メニューや成長計画の策定、計画的な人材育成が可能となります。また、熟練者が持つ「匠の技」や「判断の勘所」を細かく分解し、映像・VRなどのデジタル教材に落とし込むことで、暗黙知を体系化。ゲーミフィケーション技術を取り入れることで、学習意欲の向上や匠の技のスキル習得と全社的な技能の平準化を実現します。


3.今後の展開

藤沢工場での試験導入で得た成果をもとに、国内の他事業所にも展開していく予定です。技能伝承問題の解決にとどまらず、従業員一人ひとりの成長を後押しすることで、人的資本経営の実現にも大きく貢献していきます。
今後は、同様の課題を抱える企業との連携を広げ、この取り組みを日本の製造業全体へ波及させることを目指します。さらに、EBARA-D3™の外販やSaaS提供も視野に入れ、日本の製造業全体の発展・向上に貢献してまいります。

 

ー 荏原グループについて ー

荏原グループは、長期ビジョンと中期経営計画に基づいてESG重要課題に取り組むことで、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、企業価値のさらなる向上を図っていきます。

 


※1 ゲームデザインの要素やメカニズムを、ゲーム以外の分野(学習、ビジネス、ヘルスケアなど)で活用し、モチベーションを高めたり、行動を促したりする技術。

※2 デジタルツイン(物理的な製品や設備のデジタルコピー)に、現場の技術者の知見やノウハウ、暗黙知などを加えた概念。製造現場において、デジタルツインだけではカバーできない、人の経験や判断、問題解決のノウハウなどをデジタル化し、サイバー空間で再現・共有することで、より現実的なシミュレーションや改善活動を可能にする。